PSYCHO-PASS GENESIS 1 (サイコパス スピンオフノベライズ)-感想-
バレを含みますので、未読の方は注意してください。
GENESISⅠは、
シビュラシステムが運用されて人々の生活に浸透し始めた時代の話です。
この小説には若き日の征陸が書かれていて、
征陸が子供の頃のノナタワーが落成する話も出てきます。
征陸を通してシビュラシステムとはなんであるかが描かれていて、
全体的に暗いトーンの物語の中で、征陸家のエピソードはほっとするとともに、
やがてくる悲劇を思うとつらくなったりします。
ところで、征陸は父を亡くした原因である
ノナタワー落成式襲撃事件の首謀者にたどり着きますが、
その首謀者が外国人というのが腑に落ちませんでした。
彼には目的があったというより担がれた存在だそうですが、
紛争地帯を渡り歩いた日本に縁もゆかりもない外国人が突然、
日本を破壊しようとする意図は不明だと思いました。
例えば、シビュラシステムがあるとこのままでは日本が危ういと感じた日本人が
抵抗運動を起こすのはなんとなくわかるのですが。
作者の方はもしかしたら、首謀者を劇場版の狡噛に重ね合わせ、
(異国人であるが人々の支持を得て反政府運動に参加する)
狡噛が同じ道を辿る可能性があったことを言いたかったのかもしれませんが
少し安直な感じがしました。
あとは、小説には一期二期他の小説をからめた話が出てくるのですが、
あまりに本編を髣髴させる部分が多すぎるというか。
プロローグの八尋と征陸の対峙は、一期のプロローグの槙島と狡噛そのままで、
八尋にいたってはセリフまで同じという。
そこまで本編を意識しすぎず、
もう少しのびのびとかいてほしいというのが正直な感想です。
ただ、今までのスピンオフとは違い、
スローター(ドミネーターの初期段階の名称)を手にし、
シビュラをしめす犯罪係数に従うまま、
犯罪を犯す可能性だけで人を取り締まることを、
市民や当時の刑事がどう受け止めていたかか。
この部分が書かれていたというのは大きかったと思います。
作者である吉上亮さんは、お若いながら濃密な文章を書かれるのですが、
最初の頃に執筆された作品に比べ、
どんどん読みやすくなっているのもよかったと思いました。
続きが出て読んだら、また感想を書く予定です。